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「中村雅楽探偵全集」全5巻 
戸板康二は「團十両切腹事件」で直木賞を獲得している。
ミステリの数少ない直木賞だったので、講談社の文庫版で、同タイトルの短編集を買った。

戸板康二は、歌舞伎評論家という本業を持っていたので、まさかその後80編ものシリーズを書き続けていたとは知らなかった。長編も2編書いていた。この全集はその総てを網羅した物で、各巻600〜700ページものボリュームがある。創元社文庫で、昨年発刊された。

解説では、歌舞伎俳優が事件を解いていくことから、エラリー・クイーンがバーナビー・ロス名義で書いたドルリー・レーンにたとえらている。
だがそれより、全てに歌舞伎がかかわっているから、ディックフランシスの競馬シリーズをイメージした方がシリーズの性格を理解しやすい。
歌舞伎を全く知らなくても面白い。競馬に興味がなくても面白い競馬シリーズと同じである。

初めのうちは殺人事件だったが、だんだんと身の回りの事件へと変化してくる。昨今の状況を、20年以上も前から先取りしている。

日本語が「滑らか」で、宮沢俊三作品に勝るとも劣らない。「解ればいい」レベルのものが多い「専業」作家とは、一線を画している。

はんなりや、まったりがグルメ劇画で一躍ポピュラーになったが、このシリーズでは多くの古き良き日本語に巡り会える。

「むきだしの関西弁ではないが、なんどりとした云いまわしに、大阪の風土独特の色気があった」
「あのセリフが気がさすのかい。」
「こんな時に、私が気ぶっせいな思いをして、飲む酒の味がまずくなるような人間を誘って来ることなんか、決してないのを、私は知っている」

また、こんな文字の使い方もある
「ノートのとる覚え書きが見る見るうちに殖えてゆくほど、ゆたかな芸談を数多く聞いた」

やっと2冊読み終えたところだが、あと3冊が楽しみである。


図書館の本 | 00:04:18 | Trackback(0) | Comments(0)
山田風太郎 明治小説全集
90年代に、ちくま書房から全14巻出ていた。個人全集でなく、あるジャンルのみの全集というは珍しい。書かれたのは更に10年前。

第1、2巻「警視庁草子」  大警視川路利良と元南町奉行駒井相良守の
                知恵比べ。NHKドラマとして放送していた。
第3、4巻「幻燈辻馬車」
第7巻  「明治断頭台」
第8巻  「エドの舞踏会」 西郷従道と山本権兵衛が舞台回しになって、
      伊藤博文、井上馨、大隈重信の夫人たちの事件を解決していく。

第9、10巻「明治波濤歌」
第11巻 「ラスプーチンが来た」
第12巻 「明治バベルの塔」
第13、14巻「明治十手架」
      
近頃読み返しているが、第5,6巻の「地の果ての獄」が欠けていた。以前なら、なんとか入手出来ないものかと、焦っただろう。この先読み返すかどうかわからないので、図書館で借りて済ませた。

全作品で明治の著名人が、綺羅星のように登場し、遭遇する。遭遇はフィクションであるが、それ以外の部分は史実に基づいてる。荒唐無稽な話であるが、違和感なく引き込まれてしまう世界である。一冊読むとまた次ぎを読みたくなる。

関川夏央原作の漫画「坊ちゃん時代」でも同様な手法が使われている。「明治波濤歌」の「築地西洋軒」にでてくるエリス像や、「明治バベル塔」の「四分割秋水伝」で描かれている幸徳秋水像はよく似ている。とくに後者は共に大逆事件を描いていて、内容も酷似している。その「明治波濤歌」の解説を、関川夏央が書いているのが興味深い。

図書館の本 | 08:48:50 | Trackback(0) | Comments(0)
ディック・フランシス 「祝宴」
「再起」に続く、ディック・フランシス執筆活動復帰の第2弾

一昨年、事実上の共著者である奥さんが亡くなって筆を折っていたディック・フランシスが、執筆を再開した。嬉しいことに昨年も「順調に」書き継がれていた。

今回はオーナーシェフが主人公だが、全ての作品に共通している「競馬」というバックグラウンドは変わらない。毎年一冊づつ、40作以上も一貫して同じテーマを扱っている作家は他にいない。

初期のものに比べて、構成や緊張感が緩くなってきているのは否めないが、期待はずれという程ではない。御年88歳であるが、いつまでも書き続けてほしいと願う。






図書館の本 | 07:59:58 | Trackback(0) | Comments(0)
井上靖「道・ローマの宿」 団塊の世代が今読むべき本
これも「積ん読」の部類。前半は7つの短編からなる父母や知人の死をテーマにしてたもの。
もっと若い時に読んでもそれ程共感を抱かなかっただろう。今読んで丁度よかったと思う。

父と息子の関係
 「親と子が、親と子として向かい合うということは案外少ないものだね。」
 「そういう言い方をすれば、息子というものはみんな親不孝だよ。苛酷な批判者だからね」
その父の死の日、著者の頭の中で父との対話がある。それによって交わすべき生前の会話のなさが救われている。

母と息子の関係
 アルツハイマーで、子としては「消された」著者ではあるが、
 「母とは生前何もかも話し尽くしてしまい、もう語るべき何ものも遺されていない感じてあった」

私の母は、いろいろ話しておきたいと思っていた時に一晩で亡くなってしまい、こういう訳にはいかなかった。

図書館の本 | 08:10:12 | Trackback(0) | Comments(0)
黄昏のベルリン 連城三紀彦著
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これは図書館の本ではない。本を整理していて見つけたのだが、読み出したら止められなくなった。
20年近く前に書かれた、まだドイツが東西に分裂している時代のネオナチ絡みの物語だ。連城=恋情。息が詰まるほど濃厚な男女の愛情物語が多い著者から、突然変異的に政治的サスペンスの傑作が生み出された。しかもヒットラーの落とし種というテーマで。
ここ数年山田正紀のミステリオペラシリーズ注目をあびているが(こちらも面白い)、ペダンチックな部分が無いだけ、かえって最後のドンデン替えしの連続が楽しめる。

こんな面白い本が絶版になっていたとは知らなかった。連城三紀彦のイメージに合わなかったのだろうか。最近再刊されたと聞く。喜ばしいことだ。


図書館の本 | 12:33:52 | Trackback(0) | Comments(0)
酒場のオキテ 吉田類
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 酒場放浪記 の吉田さんの本。中身が新しいと思ったら今年4月発行だった。残念ながら、放送同様、関西圏の飲み屋の情報は少ない。それでも、ゴールデン街酒や酒場星人等々の面白いエピソードが満載されている。

子供の頃、手製のモリで川魚を採って遊んだとある。いくら高知の田舎と言っても、「手製のモリ」では生年がバレる。若く見えるが、立派な団塊の世代だった。



図書館の本 | 21:21:17 | Trackback(0) | Comments(0)
天地人 火坂雅志著
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密謀に続いて、直江兼続もの。再来年の大河ドラマの原作だ。密謀より更に先、謙信の死の3年前から始まる。川中島の古戦場を兼続が訪れる所から始まる。真田幸村も出てくるし、御館の乱の戦いにもページを裂いている。このままの形でも、充分大河ドラマの原作になるのではなかろうか。
風林火山は面白いが、井上靖の原作からはかなり外れている。先週の謙信と勘介の一騎打ちは、いくら何でもやり過ぎだ。

図書館の本 | 14:40:45 | Trackback(0) | Comments(0)
「密謀」 藤沢周平著
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直江兼続を主人公とし、秀吉の天下統一から関ヶ原にかけて、謙信以後の上杉家を描いた歴史小説である。人情時代物のイメージの強い藤沢周平が、こんな作品を残しているとは知らなかった。兼続への情報提供者として、創作の脇役達を配してあるモノの、ほぼ史実通りに物語は進んでいく。それでいて読み手を飽きさせない。さすがに「匠」の作である。
直江兼続ものとしては南原幹雄の「謀将 直江兼続」を読んだことがある。あちらは、関ヶ原後三〇万石に落とされてなお、宿敵伊達と組んで徳川と一戦を交えるという、歴史小説の枠を乗り越えようとする物語であった。
再来年の大河ドラマ「天地人」は、この直江兼続が主人公とのこと。風林火山のような見応えのあるドラマになってほしいものである。

図書館の本 | 21:37:00 | Trackback(0) | Comments(0)
「明智左馬助の恋」 加藤廣著
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「信長の棺」「秀吉の枷」に続く、信長の遺体不明をテーマした3部作の最終作である。前作同様、面白くて一気に読んでしまった。
ラストシーンで法螺貝で「落城の譜」吹かせるという件がある。平田弘史の同名劇画を思い出す。

内容は、ほかでも紹介されているだろうから省略するが、本シリーズは作品ごとに視点が変わっている。本作品は「信長の棺」を書いたのと同一著者とは思えぬ程、歪な信長像になっている。切れ者とされた京都所司代−村井貞勝もいい加減な官僚として扱われている。普通、小説家というのは自分の描いた人物に惚れ込んでしまって、身びいきになるモノと思うが。

1930年生まれでも、この3部作がデビューときく。まだまだ、アイデアは枯渇していないはずだ。次回は、本能寺に関わった第4の人物、徳川家康の視点からの作品を期待する。本作品でも、光秀の死体は影武者か、という箇所がある。天海=明智光秀説を展開する伏線ではないだろうか。


図書館の本 | 12:53:03 | Trackback(0) | Comments(0)
「4万人の目撃者」有馬頼親
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大昔、古本屋で買った本をやっと読んだ。

昨日、高村薫のマークスの山を図書館で借りて読んだ。
その解説に大岡昇平や坂口安吾の名が出てきたのが読んでみるきっかけになった。
この本も戦後文藝作家がミステリーを書くのが流行った時期に書かれたものだ。
昭和33年発行だから半世紀も前のことになる。
プロ野球選手が試合中に急死する事件を検事が追うとい筋書き。
出だしは派手だが中身はテレビドラマの台本程度の出来。



図書館の本 | 17:26:21 | Trackback(0) | Comments(0)
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