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「あいつ」のマンションを売る

2017年04月20日 06:57



あいつが住んでいた杉田のマンションは空き家のままにして来た。
突然、知らない不動産屋から手紙が来てマンションを買いたいという人がいるという。

売ったら、後であのマンションに行きたくなった時に、金に困っている訳でもないのに何故売ったのだと後悔する。
売らなかったら、もっと年取って行けなくなった時に、何故あの時に処分してしまわなかったのかと後悔する。

売っても、売らなくても、どちらにしても後悔する
だからそのままにしてきたのに。
かといって今更手紙を見なかった事にはできない。

余計なことをしてくれる不動産屋だと、迷惑に思いながら話しをすすめざるを得なかった。



買い取りは仲介価格から2~3割安くなる。
その代わり仲介手数料や残した荷物の処分は必要ない。
相見積もりもとってみたが、他の業者は仲介の査定価格は高いものの、
買い取り価格は3割引きよりもっと低い価格しか出してこない。
買い取りする気はなさそうだった。
仲介で高い査定を出していてもその価格で売れるという保証はない。
医者にかかるのと同じでリスクはすべて当事者が負う。


色々あって、当初の話しとは違って最初の不動産屋が買い取る事になった。
10年前に買った価格より200万安い値段で仲介売りした時の手取り額で契約した。
東京圏、駅から3分、買い物の便が良い、おまけに窓からの眺望が良いという条件を考えれば安いけれど、
20年もののマンションにすれば、妥当な範囲の下限には入っていると思った。
長引くと、価格云々以前に手離す事自体迷ってしまいかねない。
不動産屋も、100万の手数料を稼ぐより、リノベーション後の転売でその何倍も儲かると踏んだのだろう。



あいつが自分で見つけて来て、ここしかないと気に入っていたマンション。
病状が進行して引きはらう時には、「これで最後か」と呟きながら室内を撮っていたマンション。
部屋をリノベーションされてしまえば、あいつが生きていたという証拠がこの世からまた1つ消えてしまう。
この先、あいつの為に何がしてやれるだろうか。