北森鴻「暁英~贋説・鹿鳴館」

2010年07月15日 16:52

今年一月に亡くなった北森鴻の遺作である。

著者自身と覚しき作家が、鹿鳴館をテーマにした作品を書こうとするところから始まる。
あれほど有名な鹿鳴館の設計図が無く、建物に関する資料も殆ど無いという。

鹿鳴館の設計者コンドルを中心に、西南の役を挟んで、明治政府VS英国商社マセソン社の闇の戦いが語られる。
マセソン社はアヘン戦争の影の当事者で、日本を第二の清国化しようと企んでいる。
ジャーロに連載されていた「明治異国助人走る」シリーズの医師ベルツも登場する。

久々に、北森鴻が紡ぎ出す精緻な「お話」の世界にドップリ浸かることができた。

残念ながこの作品は未完である。分量的に「お話」の大部分は語られていて、後は大団円で人間関係をまとめ上げれば終わりという所まで書かれている。唯一「建物としての鹿鳴館に秘められた狙い」だけは永遠の謎になってしまった。

完成作品では「うざぎ幻化行」が遺作になる。連作短編が長編なっているという凝った構成だった。
テレビドラマ化された東野圭吾の「新参者」も同様の構成だが、北森のはあの構成でなければ書けないというか、構成そのものがネタになっている非常にトリッキーな作品だった。手の込んだ作品を書き続けた為に、寿命を縮めたのではないとさえ思う。

作品リストを改めて眺めたが、残念ながら読み残している作品はなかった。
15年間で20余りという作品数が、一作一作丹念に書かれた事を物語っていた。
心よりご冥福をお祈りする。



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コメント

  1. かずさん | URL | -

    Re: 北森鴻「暁英~贋説・鹿鳴館」

    享年49才、若すぎる死でした。
    一作一作丁寧に書き込まれているという点で、北村薫と並んで好きな作家でした。

  2. 風斗 碧 | URL | 2jdrH5ZE

    Re: 北森鴻「暁英~贋説・鹿鳴館」

     初めまして。
    『暁英』の感想を探していてたどり着きました。
    私もとても面白かったです。
    私はコンドルファンなので読み始めたのですが、他の史実などでは軽く扱われてしまう佐立七次郎を奥深く描いてくれたのがとても好感でした。
    北森作品には、まだ他にもベルツや暁斎が登場するものがあるそうなので、ゆっくり探してみたいと思っております。
    お邪魔致しました。

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