「イントラ反転」に見る佐久間アンプ

2012年10月01日 11:28

826singles.jpg
これは「送信菅によるシングルアンプ製作集」の第2章にある「残留ハム打ち消し方式採用オール直熱管構成926シングルアンプ」の回路だが、反転用にインターステージトランスだけでなくインプットトランスも入っている。26は8.3、46では僅か5.6という低μの為インプットトランスを加えないと増幅度が不足してしまうからだった。
佐久間アンプの音に迫るで書いたように、そのエッセンスをインプットトランス、ドライブ球、インターステージトランス 出力球、出力トランスという流れでとらえれば、宍戸さんのイントラ反転アンプも立派な佐久間アンプの例である。

この後もオール直熱管構成アンプとして、「オール直熱管構成出力15W RCA 830Bシングルアンプ」や「オール直熱管構成出力35W UV-838シングルアンプ」も掲載されている。こちらはTKS32改という1K-100K(巻き線比1:10)の特注インプットトランスが使用されている。

きちんと特性を追い求める宍戸さんは佐久間アンプを無視していたかというと、全く反対で、歪率を追い詰めている時には「佐久間氏の言う"測定器の奴隷"になってしまったかな」という自嘲が聞かれるし、なにより次のような佐久間アンプへのオマージュとも取れるような文章を残している。

『かつて何かの雑誌で「最近,特性が悪いのに音が良いなどという暴論が横行して困る」といった意味の発言がなされているのを読んだとき,私の独断と偏見に満ちた邪心は,すぐにこれは佐久間アンプのことについていわれたことに違いないと憶測を下しました.氏のアンプの静特性の無惨さたるや相当といいたいところですが,それ以上のもので,例えば矩形波の人力が1Wの出力として出てくるときは,3 kHz ですでにサイン波の様相をおび,10kHzの歪率は出力に関係なく,ほとんど一直線に10数%台を頑として譲らないといった立派さなのであります。

 私とてもし佐久間アンプを根固瑠土(コンコルド)なる氏の館で聴いていなかったならば,まったくその通り,と満腔の賛意を表していたに違いありません.ところが氏の館でモノのラウザーを通して再生される佐久間アンプの音は,かつて私がどこでも聴いたことのない実在感に満ち,音離れがよく,スピーカーを意識させないモノとは思えない広い音場を再現する音であったのです。
 その音が普遍性があるのかとか原音に近いのか,などという問題はこの佐久間アンプの音の前ではまったく問題にならないのです.そこに出現している音そのものが「原音」なのです.第一今日多少ともレコード製作の現場を知っている人ならば,レコード音楽に原音再生などという期待をもつのは,虹の根本にあるといわれる金銀財宝を追いかけるのに等しい夢物語だという
ことは解っているはずで,現にわがオーディオ界の大先達のひとり,岡俊雄氏は10年も前に(このころの方がまだHi-Fiに近かった)「レコード音楽の再生とはいかにそれらしいイルージョンを創造するか」だという意味のことを喝破されています(注1)

 この意味では佐久間アンプは,いやもっと正確には佐久間再生システムは,そのイルージョンを実存させ得たという意味で「原音」であるといっていいと思うのです.佐久間システムの音を聴いて以来私は,私のアンプ群の中に1台くらいは佐久間システムのような音が出るアンプがあってもいいなと思うようになっていました。
 ただし,そのためにスピーカーまで取り換える気にはなれず,最近まで真っ当なアンプを作り続けてきました。それが今回の801Aアンプではスピーカーを換えることなく、その音に近い音が出てきたというわけです。』


その回路がこれ
801asingles.jpg
インプットトランスは無く、「普通の」イントラ反転アンプ。

その801A(VT62)をNEW BIG ONEで聴いてみよう。
佐久間アンプには801ドライブ801アンプがあるし、50のドライブ球にも使われてる。
また宍戸氏は通常の500Vの高圧では「ストラディヴァリウスがブリキを引っ掻いたようなような」音になるという、曰わくの有る球である。

オシロで波形を睨みながらプレート電流を変えて行き、Ep=260V Eg=+6.5V Ip=65mAで5.8W得られた。
高圧(450V)と低圧(250V)で聞き比べてみたけれど、基本的な音の違いはなかった。
高圧で出力を出そうとするしプレート損失を超えてしまうし、低圧ではプレート電圧に頭を抑えられてプレート電流を大きくしても出力は伸びない。専用アンブにするなら300V付近が最も良さそうだ。

クラシックは送信菅特有のカッチリとした音で端正に再生する。
以前「ボコさん」に聴かせていただいた、ヨーロッパの銘球EN406の音を彷彿とさせる。
ジャズではブルーノートのようなガチガチの録音には柔らかすぎる。音の良いジャズ録音、例えばYPMの「ぴあの ぴあーの」なんかがベストマッチではないだろうか。
難点をあげるとすれば、スケール感や躍動感、力強さに乏しい事だろうか。
もっとも、これらは正反対の性格だから両立させるには無理がある。

RCA801Aでなく、HYTRON VT62だったが、佐久間アンプってこんな傾向の音なのか?
何時か館山の「根固瑠土」へ行ってみずば成るまい。


関連記事


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://fugaku2.blog74.fc2.com/tb.php/1709-0ea9791b
    この記事へのトラックバック