第8回 サルコーマセミナー イン 大阪・中之島センター 2013 その2

2013年11月19日 11:31

いよいよ次が本日のメインイベント。
朝から休憩無しの後、4時間ぶっ通しのセッションで、脳がパンクしそうだった。

シンポジウム"パゾパニブとレゴラフェニブ:肉腫とGIST治療のUpToDate"



「オーバービュー"血管新生阻害剤と増殖シグナル阻害剤の開発"」
大阪府立成人病センター 病態生理学部長 内科 高橋克仁
 
・亀田総合病院、がん研有明病院、兵庫県立西宮病院を合わせるとパゾパニブの症例は100件に及び、
 現在最も多くの症例を検討できるセッションである。

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肉腫のパゾパニブも、GISTのスニチニブ(スーテント)に続く第3の治療薬レゴラフェニブも共に血管新生阻害剤として作用する。(レゴラフェニブは更に腫瘍の増殖を阻害する働きもある。)
VEGFR2を介して腫瘍細胞の血管新生だけを阻害してくれれば良いけれど、正常組織、特に心臓の筋肉の血管新生も阻害し、高血圧や、ウチのような狭心症の心機能障害をもたらす。

考えてみればアバスチンという「先輩」があり、同様の作用機序に基づくパゾパニブでこのような副作用がある事は容易に予測できた。しかし一般的には、下痢や高血圧症、手足症に白髪がせいぜいで、これまでの抗がん剤に比べて副作用の少ない薬として受け取られている。点滴薬で無く飲み薬という事もあったのだろう。
演目に無くとも、このセッションでは常に底流となるキーワードだった。


「転移性肉腫に対するパゾパニブの検討」
兵庫県立西宮病院 化学療法センター長 楢原啓之

・33症例の紹介。
 原発:子宮11例・後腹膜10例、病理組織:平滑筋肉腫17例、女性31例/男性2例 
 女性で子宮・後腹膜原発が圧倒的多数というのは世間値と同じ

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・800mg開始では重篤な有害事象あり。日本人では400mg,800mg,1000mgで薬物動態に差が無い為400mgから開始している。

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・SD+PRで64%というのは、第3相臨床試験の成績とほぼ同じ。
 治験に参加できるのは状態の良い患者だけだから、ここの患者は比較的早い段階でパゾパニブを始めているのだろう。

・全生存期間は、45週の現在もまだ中央値に達していない。
・デノスマブ(ランマーク)の投与の有無は、治療に影響しなかった。 


「進行軟部肉腫40例でのPazopanib有害事象の検討」
亀田総合病院 腫瘍内科部長 大山優

・病理組織:平滑筋肉腫31例、女性37例/男性3例 
 ここも女性の平滑筋肉腫が圧倒的多数。原発の言及は無かったが子宮・後腹膜が多数を占めているのだろう。
・800mgは維持が難しく400mgスタートというのも前者と同じ。
・PDが54.3%(19例)、SD+PRで45.7%(16例)で前者より悪いのは、1~2の抗がん剤をしきたた人が 19例、
 3~4が21例と状態の悪い患者が多かった為だろう。
・2週間の入院の後、最初は毎週フォローする。数ヶ月経ってから月一のフォローに下げる。


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・PDが18人で、死亡が10人。PD等の「成績」が出ている人は40人中35人だけ。
 5人はそれを待つまでもなく死亡したという事か。
 保険認可前の個人輸入からスタートしてきたという事情がそれを物語っている。
・血小板減少で減薬・中止になった人も8例を数える。間質性肺炎で中止になった例もある。ウチの場合は片肺なので致命的だ。


「がん研有明病院サルコーマセンター概要 パゾパニブの運用体制と導入状況」
サルコーマセンター 総合腫瘍科 仲野兼司

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・国立がんセンターと一緒で古くから骨肉腫を扱っているので、サルコーマセンター設立以前から内臓より四肢の患者が多い。


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・24人の内で男性が女性を上回っている。
・病理組織も平滑筋肉腫一辺倒で無く、ばらついている。
・24人全員が他の抗がん剤を経験している。

・入院で導入したのは8人だけで、他は通院で始めた。量もグラフト社の取説通り800mgスタート。
 患者の絶対数が多い所為だろうか、他の病院比べてチョット荒っぽい感じがする。

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・グレード3が10例なのに、減量は半分の5例で800mgから600mgと最小限。
 クレード3に成らないけれど甲状腺機能低下も多い。TSHが増加しただけなのだろうか。

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・気胸のCT像。胸膜に接触し空洞のある腫瘍が治癒する時に気胸が起きるという見本のような画像。
 このケースは自然治癒を待ったらしいが、片肺だとこれも一挙に重篤な状態に陥る。


「パゾパニブ(ヴォトリエント)の使用経験」
淵野辺総合病院・新山手総合病院 外科部長 大野烈士

・症例は7例だが外科医が手術と共に自身が担当するという、腫瘍内科以前のスタイル。

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・好き好んで中断する訳では無いけれど、中断後急激に増大してくる事があるのは、他の抗がん剤と一緒。
 それにしても7例中2例で敗血症が出てくるとは。


「子宮平滑筋肉腫再発に対してパゾパニブを投与し重症心不全を来した1例」
大阪府立成人病センター 婦人科 大門映美子

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・最初の手術の後で多発転移し、しかも抗がん剤も効かなかったら、脊椎に一気に骨転移。

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・バゾパニブで心不全の副作用がでて来たので、カルシウム拮抗剤で血管を広げて対処したけれど、
 EFは更に低下してパゾパニブ休薬に追い込まれた。
・一カ月のパゾパニブ休薬でEFは戻ってきたけれど、更に腫瘍が増大して亡くなった。


「子宮平滑筋肉腫に対するパゾパニブ治療の位置づけ」
大阪大学医学部付属病院 産婦人科講師 吉野潔

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・子宮平滑筋肉腫に対するパゾパニブのデータを集約する為に、この条件で大學・病院の症例を
 2013~2018の5年間かかって集めようというもの。800mg固定は難しいと思うけど。

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・GTやAiが今もファーストライン。
 GTは止めるとリバウンドしてくるので、厄介という話だった。


「GISTに対するレゴラフェニブ治療の最新治験」
大阪大学医学部付属病院 外科助教 高橋剛

・今年6月に保険適用となったイマチニブ、スニチニブに続く第3のGIST治療薬、レゴラフェニブの第3相臨床試験の結果について、詳細な説明があった。

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・手足症、高血圧で結構な率でグレード3が出ている。スチバーガ(レゴラフェニブ)は副作用の強そうな薬だ。




「血管新生阻害剤の心毒性について」
大阪府立成人病センター 循環器内科主任部長 臨床腫瘍科 向井幹夫

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・通常抗がん剤を使うと血圧は下がるが、血管新生阻害剤の場合は上がる。これが問題。

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・門脈血栓のある患者に、ワルファリンで血栓を溶かしながらレゴラフェニブ投与による高血圧をコントロールする事を試みた。血圧上昇以外に発疹、発熱、下痢。肝機能障害の副作用に対処しつつ、治療を進めたが7/25で肝機能障害が顕著となり、PDと判断した。


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・血管新生阻害剤の投与により、腫瘍以外の健全な血管内皮のメンテナンスが悪くなり、血行不良や蛋白尿、傷が治りにくい、生理不順となって顕れる。

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・パゾパニブでは血管新生阻害だけだが、レゴラフェニブでは腫瘍増幅や微小循環にまで作用するので、副作用が強い。


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・スーテントも血管新生阻害剤として働く。左心室機能LVEF低下が顕れる。20以上なら回復する。


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・血管新生阻害剤は血管の内皮細胞に作用して血管攣縮や血栓生成よる心筋障害や狭心症を来たし、
 腎臓の内皮細胞に対しては微小血栓性循環障害による蛋白尿、VEGF産生低下による
 末梢血管抵抗上昇を引き起こす。また、これらは互いに影響を及ぼし合う。

・血管新生阻害剤は老化を人工的に引き起こしているようなものだ。


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・心毒性をチェックする目的は、治療の中断ではなく、患者の安全を確保しつつ病状をコントロールして治療を継続することにある。















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